Ripple社 RippleNetサービスの特徴およびXRPの役割
Ripple Inc.
2012年、OpenCoin Inc.(後のRipple Inc.)を設立し、今のRippleNetの原型となるシステム開発の事業を本格的に開始しました。
2013年にRipple Labs Inc.に社名変更、そして2015年にRipple Inc.へと社名を変更し、現在の主力事業である国際送金ソリューションの開発にシフトしていくこととなります。
リップル社では、インターネットを通じて情報やデータが場所や時間を問わず瞬時に伝達・交換できるのと同様に、金融資産をはじめとするあらゆる「価値」資産の交換が瞬時に実行できる世界「価値のインターネット(Internet of Value)」の実現を目指しています。「価値のインターネット」の実現に向け、リップル社では世界中の異なる台帳やネットワークにおける決済を標準化するための規格(ILP:インターレジャープロトコル)づくりを提唱しており、現在ではW3C(World Wide Web Consortium)というウェブの標準化を進める非営利団体によって標準化が進められています。
「情報のインターネット」の世界でHTTPが国際標準規格となったように、ILPは「価値のインターネット」の世界において国際標準規格となることを目指しています。
「価値のインターネット」の実現は、より多くの個人が金融システムへのアクセスを手にすることにもつながり、価値移転のハードルが下がることで、グローバルで新たな産業やイノベーションが生まれる可能性もあり、現在ではさまざまな金融機関や決済プロバイダーがリップル社と提携を進めながら実証実験を開始しています。
RippleNet
RippleNetとは、ILP(InterLedger Protocol)をベースとした、世界共通の決済ネットワークのことです。
RippleNetは、xCurrent、xRapid、xViaの3つの主要なソフトウェアで成り立っており、システム内部ではXRPという暗号通貨、InterLedger Protocolという通信規約、そしてXRP Ledgerという台帳などの重要な仕組みが利用されています。
その台帳にはブロックチェーンで分散型台帳技術が使われています。
共通の送金ルールを作ることによって、ネットワークに参加している顧客は瞬時に取引をすることが可能で、今までの国際送金で問題となっていたスピードや料金等の問題を飛躍的に改善することができます。
今のところ世界で唯一の国際送金用途の法人向けブロックチェーンソリューションであり、現在200近くの企業、団体が参加しています。
InterLedger Protocol(ILP)
ILP(InterLedger Protocol)は、Ripple社が2015年に提唱した、世界中の異なる台帳やネットワークをまたがる取引における決済方法の国際標準規格化プロジェクトのことを指します。
ILPの実現は、異なる台帳間での価値移転を可能にすることによって従来のコストを大きく削減できることから、現在でも実現が難しいマイクロペイメントも可能にし、価値あるコンテンツを提供する人々に支払い通貨(台帳)を気にすることなく対価の支払いが可能な「価値のインターネット」の実現の基盤となるものです。
3つのソリューション xCurrent xRapid xVia
Ripple社は、ILPをベースに送金のすべてを可視化しリアルタイムメッセージングを可能にするxCurrent、流動性コストを最小化する金融機関・送金プロバイダを対象としたxRapid、リップルネットワークに接続可能なAPIのxViaの3つのソリューションを開発しており、さまざまな事業者を対象として統一された送金規格づくりに注力しています。
xCurrent
xCurrentは、Ripple社の提供するRippleNetに接続するソフトウェアで、リップルネットの参加者すべてが利用するものです。現時点では、銀行を対象としたソリューションですが、即時の国際送金と送金のプロセスの可視化を提供する法人向けソフトウェアソリューションとなっています。
xCurrentは、以下の4つのコンポーネントから構成されており、リアルタイムメッセージングが可能となり、取引前に決済内容の確認や決済後の着金確認ができるようになることが特徴です。
- メッセンジャー
双方向性のAPIベースのコンポーネントです。このコンポーネントの存在によって、銀行は瞬時に顧客情報やリスク、費用、為替、支払いの詳細を把握でき、送金を完了できます。 - バリデーター
支払いの成否を確認するコンポーネントで、ILPレジャー上の資金移動を決済リスクや遅延を最小化するための調整をします。また、バリデーターは支払いに関する取引相手を証明する役割も担っています。 - ILPレジャー
銀行向けに構築された一般的な台帳の補助的な台帳となるものです。
取引のクレジット、デビット、流動性をトラッキングするために利用され、異なる台帳を含むすべての取引で資金決済が即座に行われるようにします。
異なる台帳での取引が可能になることで、手数料や即時決済が可能となり、決済リスクも大幅に低減することが特徴です。 - FXティッカー
流動性プロバイダーによって台帳間の取引をスムーズにするコンポーネントで、台帳間にあるさまざまなペアでの取引レートを設定する役割をもっています。
ILPレジャー上のアカウント、通貨、認証のトラッキングも行っています。
xRapid
xRapidは、Ripple社のデジタルアセットであるXRPを活用した流動性コストを最小化するソリューションです。
ノストロ・アカウントを利用する国際送金で課題となる多額の準備金や手数料を削減することが特徴で、送金業者や金融機関を対象としています。
xRapidではXRPを保有する必要がなく、指定した送金額が取引所でXRPに変換・送金された後に送金先の通貨に変換、受取金融機関の銀行に振り込まれる仕組みとなっています。
ノストロ・アカウントとは資金決済を行う当方が外貨建てで保有する決済口座のことです。この決済口座で銀行間の外国為替取引の際、外貨の決済口座を相手銀行に告知することになります。
xVia
xViaは、xRapidと同様にRippleNetを活用した送金を行いたい事業者や送金業者、銀行のためのソリューションです。
xRapidとの違いは、xViaはシンプルなAPIでソフトウェアのインストールが不要なことにあります。
RippleNetを利用することで複数の異なる台帳であっても、オンデマンドで着金の確認やトラッキングが可能となることが特徴です。
XRP Ledger(分散型台帳)とXRP(ブリッジ通貨)
XRP Ledger
XRP Ledgerはリップル社によって開発された分散型の台帳です。
異なる台帳間の取引を可能とする国際標準規格であるILP(InterLedger Protocol)をベースとしたXRP Ledgerは、トランザクション(取引データ)などの情報を管理し、ネットワークに参加しているユーザーが従来の国際送金よりも低コストで迅速に、消失リスクに悩まされることなく送金ができる仕組みとして開発されました。
XRP Ledgerのネットワークでは、トランザクションの承認を行う承認ノード(Validating Node)と、受け取ったトランザクションを他のノードに送るトラッキングノード(Tracking Node)が存在します。
トランザクションが行われるとトラッキンングノードが隣接するノードにトランザクションを送ることでネットワーク全体に伝播させ、承認ノードがトランザクションを受け取った後に承認が行われます。
その際、十分な数の承認ノードによって承認が得られなければ次回の承認に回され、承認作業が完了した場合にはノード全体に共有されます。
PoW(Proof of Work)のような膨大な計算による承認作業が必要ないXRP Ledgerでのコンセンサスプロセスでは、送金完了までの時間が4秒かつ取引手数料が安いという特徴があります。また「51%攻撃」に強いという特徴もあります。
XRP
XRPは、金融機関が国際送金で抱える課題を解決するために開発されたリップルネットワーク内のネイティブ通貨です。金融機関はXRPをさまざまな法定通貨、暗号通貨のブリッジ通貨として機能させることで、従来の国際送金コストを60%削減できるといわれています。「XRP Ledger」と呼ばれる独自の分散型台帳技術を利用しています。
XRPはブリッジ通貨としての役割、つまり金融機関のリアルタイム国際送金において流動性を確保する通貨間の橋渡し役を担っています。複数の銀行を中継することによって時間と手数料がかさむ従来の国際送金に対し、XRPを利用した送金はわずか4秒で決済が完了することが特徴です。
また、スケーラビリティは24時間365日、毎秒1500件の取引を処理することが可能で、将来的にはこの処理件数を拡大することも可能だとされています。
過去にRippleとR3が共同で行った12社の金融機関も参加した実証実験によると、XRPを使用することで送金コストが60%低減できることが実証されています。