JPモルガン Quorumのブロックチェーンを活用したIINおよびJPMコイン

  • slide
J.P.Morgan
Interbank Information Network
加盟銀行: 157行以上
トピックリスト

J.P.Morgan

 J.P.Morganは、アメリカのニューヨークに本拠地を持つ、巨大な金融系グループ企業の一つです。グループの総称は「JPモルガン・チェースグループ」であり、JPモルガンはJPモルガン・チェースグループの投資銀行という位置づけになります。

J.P.Morganの社歴
 1871年にニューヨークで設立された「ドレクセル・モルガン&カンパニー」から始まり、後の1895年に「JPモルガン&カンパニー」となり、「モルガン財閥」を築き上げました。
 1929年の世界恐慌で大打撃を受け、「JPモルガン&カンパニー」は投資銀行である「モルガン・スタンレー」とに分割された経緯があります。
 2000年には「JPモルガン」は「チェース・マンハッタン」と経営統合により「JPモルガン・チェース」となり、投資銀行を再スタートさせました。グループの「チェース銀行」は米国におけるリテール銀行業務を行っています。

デジタル改革に最も熱心な国際金融機関
 
2014年には既にジェームズ・ダイモンCEOが、今後の金融市場の変革を予告しており、近年、フィンテックは従来の金融システムを大きく変えはじめている現状を考えると結果は的中しています。
 2015年には、本格的なデジタル改革に乗り出し、年間90億ドル以上をテクノロジーに投じるようになりました。
 2016年にはそのうち6億ドルを、ビッグデータやAI(人工知能)、機械学習などのフィンテックソリューションおよびプロジェクトに投じています。

 J.P.Morganは「新たな顧客価値の創造」に向けて「フィンテック」や「デジタル革命」において以前から本格的に取り組んでいたことが伺えます。

Quorum

 J.P.MorganはEEA(Enterprise Ethereum Alliance)の創始メンバーであり、理事メンバーです。EEAとは、イーサリアム(ETH)をビジネス利用する為の企業連合で、多くの企業が参加をしています。
 2016年に着手した分散型台帳プロジェクト「Juno」では、オープンソース型ブロックチェーンの可能性を模索しており、スマートコントラクト・プラットフォームを開発しています。
 このシステムを「Quorum」と言います。

 Quorumは、中央管理者が存在しないパブリックチェーンや複数の管理主体が共同運営するコンソーシアムチェーンとは異なり、単体の組織内で管理されるプライベートチェーンとなります。
 承認された参加者グループ内で、迅速・安全で透明性の高いプライベート取引ができる環境を提供しています。

Interbank Information Network

 J.P.Morganは2017年より、カナダロイヤル銀行およびオーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)と共同で「Interbank Information Network(IIN)」サービスを立ち上げています。

 Quorumが提供するブロックチェーン技術を活用し、インターバンク(銀行間)決済プラットフォームを開発しています。
 複雑な処理と時間、コストを要する国際送金プロセスの、劇的な簡略化とスピードアップ、コスト削減を図る画期的な試みとなります。

 ブロックチェーン技術を用いた決済ネットワークInterbank Information Networkには、国際的に157以上の銀行が加盟しており、銀行間で情報を共有するという課題に取り組み、取引を迅速化することを目的にしています。

Interbank Information Network(銀行間情報ネットワーク)の動向

 Interbank Information Network(IIN)は、グローバル決済プロセスにおける摩擦を最小限に抑えるためにブロックチェーン技術を使用することに焦点を当てた取り組みと言っても過言ではありません。
 つまり、グローバルの銀行間決済時に生じることですが、金融関係者や周囲からも指摘されていた課題点である「既存の国境を越えた支払いメカニズムにおけるプロセス上の摩擦」に関するものです。

 既存の仕組みによる限界があり、トラブルや処理の遅延などがありました。その決済処理の解決策として、ノンバンクが参入しようといった動きがはじまっており、今や決済システムはノンバンクとの競争によって、銀行が最も脅かされている分野です。

 IINは、グローバルな決済処理をスピードアップすることを目指しています。
 ブロックチェーンが自社のビジネスチャンスの多くを社内に保つ手段となるとの認識から、多数の大手銀行はブロックチェーン分野への取り組みを重視しはじめました。
 市場に出回る競合の決済システムプロダクトの数が増加したことに反応して、多数の大手銀行がIINのトライアルに合流しています。

J.P.Morgan 独自ステーブル暗号通貨JPMコイン発行

 JPMコインは、J.P.MorganとEthereum Enterprise Alliance(EEA)に開発されたエンタープライズプライベートブロックチェーン「Quorum」上で動作・利用されるステーブル暗号通貨となります。
 プライベートブロックチェーンとは、利用者に制限のあるパーミッション型の分散型台帳であり、IINグループ内のプライベートトランザクションの高速かつ高スループットの処理を必要とするアプリケーションには最適です。
 個人投資家等から集めた巨額な資金の投資・運用をする機関投資家向けに、企業間の資金移動をより高速で行うことを目的に設計されています。

 米ドルの価値に相当するJPMコインは、機関投資家(クライアント)による資金決済を目的としており、クライアントはJPMコインを発行するために担保となる米ドルを準備します。準備したJPMコインは、JPモルガンのブロックチェーンネットワーク間で取引でき、1:1の為替レートで米ドルに償還できます。将来的には他の通貨への派生も視野に入れています。またJPMコインの使用が増える事で、他のプラットフォームへの拡張も見込んでいます。

 JPモルガンは既に、Quorumを利用するプロジェクトとして「Interbank Information Network(IIN)」サービスを開始していますが、IINはプライベート型ブロックチェーンであるQuorumに参加する銀行間で、決済に必要な情報を共有することを目的としているサービスです。
 同様にQuorum上で稼働するJPMコインは、資金移動の際にシステム的に価値を移転させることを目的としているため、IINとはシステム上で直接干渉することはないとしています。

 2019年02月14日、JPモルガン・チュースは、米銀行初となる独自のデジタル通貨「JPMコイン」をローンチした事を発表しています。
 JPMコインのプロトタイプを用いて少数の同行機関投資家間でのテストを実施中ですが、2019年後半にはより広範なテストを実施する予定となっています。


bitbank